経済格差について
今日は、経済格差について書いてみたいと思います。
先日、来日した「21世紀の資本」の著者であるフランスの経済学者トマ・ピケティ氏が、中日新聞社からのインタビューを受けたようで、そのときのインタビューの内容
(世界の経済格差について)が中日新聞に掲載されていました。
「21世紀の資本」という本は、世界の経済格差問題について探求された内容の本で、
現在、各国から注目を集めているベストセラーです。
以下に、ピケティ氏へのインタビュー内容を要約してみました。
1.世界各国の経済格差をどう見ますか。
→各国での経済格差は大昔からありました。
しかし、2度の世界大戦をとおした期間(1910年代~70年代)には、株の暴落で
資産を失う富裕層が増えたり、戦費の調達で富裕層に対する課税が強まったり、
また、戦後の土地改革により大地主が減少したりなどして、経済格差は縮小しました。
しかし、1980年代になるとアメリカで富裕層への課税が弱まり出したことで、再び
各国で経済格差が拡大し始めました。
2.日本の格差をどう思われますか。
→日本もアメリカほどではないにしても格差は広がりつつあります。
日本は近年、人口が減少傾向にあり、また経済成長率も下がってきていることから
働く人の収入が増えていかない状況にあります。
そのために、資産からの収入も得ることができる富裕層と働く人たちとの格差は、
ますます広がってきています。
また、他国よりも失業率は低いものの、非正規雇用の割合いが増えているのは心配です。
新しい技能を習得させる環境が縮小してしまうので、経済成長にマイナスの影響を与える
恐れがあります。
3.格差は悪いことですか。
→格差は市場経済には付きもので、労働意欲の活性のためには正当化できるという論理が
ありますが、ある意味それは正しいことなのかもしれません。
しかし、格差が不平等のもとに行き過ぎるようになると、才能があっても貧困層の
生まれであるがゆえに 教育を受けることができないという事態が発生してしまいます。
そうなると実力主義という資本主義の根本が失われてしまうことになります。
親から不動産や株式などの資産を引き継ぐ富裕層は、家賃や株式配当の収入を得ることができる一方で、資産を引き継げない人は、働いて少ない収入を得るしか方法がないのが
現状です。
これからの若い世代では、遺産を持っている人とそうでない人との所得格差が拡大する
恐れがあります。
4.アベノミクスについてどう評価されますか。
→安倍政権は、まず富める者を富まし、次にその恩恵を国民に落としていくという
「トリクル ダウン理論」に沿った政策を行なっていますが、この政策が過去にうまく
いった例はありません。
とくに金融緩和政策には危険があります。これによって資産を持つ人の収益は増えても
働く人の収入は増えるとは限らないので、所得の格差はますます拡大してしまう恐れが
あります。
5.日本での格差を縮めるにはどうしたらよいですか。
→人口減少を反転させる施策が必要です。
女性が働きながら子育てができる環境、そして父親も子供の面倒が見れる環境にして
いくということです。
また、消費税の引き上げは中低所得者層への負担を増大させるので望ましくありません。
何よりも中低所得者層の人たちへの負担を減らす税制が必要です。
そのためにも富裕層の資産への課税を増やし、その財源を子育てや就職支援に回せば、
格差は是正され、出生率もまた改善して、経済成長率は上がっていくと思います。
6.経済成長と格差是正は両立できますか。
→両立できます。
グローバル化が進んでいるので、これからは、ますます教育の重要度が増してきます。
多くの若者が十分な教育を受けられるようにすることが大切です。
21世紀の経済成長のために教育、学校への投資は増やすべきです。
7.これからも格差は世界的に拡大していくのですか。
→今後、先進各国の経済成長は鈍っていくと思われるので、それに伴う格差の拡大は
進んでいくと思われます。
対処法は、先ほど申した富裕層への課税強化です。しかし、そのような事態になると富裕層は国外へ資産を逃避させる可能性があります。そのためにも各国が連携して資産課税を導入することが大切なのです。
国によっては、中小企業よりも大企業が払う法人税が格段に安いという不平等も
あります。
このようなことを是正していくことも大事なのです。
所感
実のところ、ピケティ氏の持論に対しては賛否両論があります。
賛同する意見がある反面、日本はそれほど格差は拡大していないなどの意見もあります。
しかし、今後、日本で格差問題が深刻化してきた場合には、ピケティ氏の持論を対処策
の1つとして取り上げてもいいのではないかと思います。
以上、経済格差についての記事でした。
2015年2月14日